システム業界にはディレクターが不足している(気がする)
「システムエンジニア業界にはディレクターがいない気がする」というハナシをします。
「ディレクター」とは、書いて字の如く、「ディレクションをする人」です。
では「ディレクション」ってのは何でしょうか。これもまた曖昧な言葉なので改めて定義すると。
オイラはディレクションを、「自分が正しいと思う方向へ導くこと」だと思っています。そのためのしごととして「仕様の決定」と「制作現場の統括」の2つ、場合によっては「企画・発案」なども含まれるかもしれません。
映画とかテレビ番組とか、あるいはスポーツなどにおいて「監督」と呼ばれるような人たちがする仕事。それが「ディレクション」です。
もちろん、エンジニア業界にも「ディレクション」を仕事にしている人はいます。。。が、ほとんどの場合、「ディレクションし切れていない」という印象を受けます。
これは彼らが悪いのではなく、「ディレクションってむちゃくちゃ大変」っていうのと、「ディレクションの大変さが理解されていない」っていうのが大きいです。プロジェクトマネージャー、リーダーなどに比べて認知度が低いです。
また、大変すぎるので「分業」になっていることも多いです。リーダーやマネージャがディレクションも担っていたり、あるいはデザイナーさんがディレクションを買って出たりしますね。
ですが、オイラの観察範囲では、彼らのディレクションの多くが「行き先をある程度決める」「上から大枠と指示する」くらいで終わっているのですよね。(これすらできていない企画者などもいましたが、それは論外です。)
もちろん、指示・管理もディレクションの大事な仕事ですが、それ以上に「成果物の評価と調整」は必要不可欠です。これが欠けてしまうと、ディレクションは成立しません。
が、オイラが見てきた「リーダー」や「デザイナ」の多くは、この評価と調整をしないのですよね。最終的な現場の判断をしない・・・あるいは、できる権限を持っていないのですよね。そのため最終成果物がディレクション通りにいかないことがほとんどです。
もしオイラがディレクターをするなら、すべての成果物を、リリース前に自分でレビューしてNGを出すか、自分で調整します。相当信頼できる人がいればその人に任せるかもしれませんが、それでも大半は自分で触ってみてチェックします。
たとえばWebサービスを企画するなら「ユーザの待ち時間は長すぎないか」「クリックしたとき・マウスオーバーしたときの質感に気持ち良さはあるか」「見せたい情報がちゃんと見せられているか」「動きにカクつきはないか」などなど、数え切れないほどのチェック項目があります。
それら全部をディレクションするためには、「評価と調整」という工程は絶対に必要です。そしてこれらの評価は「自分でやるしかない」というのが正直なところです。だって「この方向へ導く」と決めたのはディレクター自身だからです。
こーいうことをすると自分で開発をすることは難しくなりますが、それが当たり前なのですよ。それくらいディレクターって大変です。片手間じゃ無理です。ディレクション業をするだけでも、残業が発生するくらい忙しいのが「ディレクション」という仕事です。
そして、これを実現するにはディレクター自身にも能力がいりますし、権限も必要になります。野球において、一時期の読売ジャイアンツの顔が「長嶋監督」であったように、ディレクターがその企画の顔になるくらいの能力と権限が必要だと思います。
そういった認知なども含めて、「ディレクター」というのはシステムエンジニア業界ではあまり理解されていないんじゃないかなあ。。。と思ったので書きました。
「物事を完成させるための管理能力」というのは皆さん持っていて、だからこそ世の中にプロダクトが溢れているのでしょうけど、「ディレクションして完成させる」が欠落しているように感じるオイラでした。