パルワールドは「模倣の組み合わせ」の「一発目」を出してきているから引っかかったのかな。
先日、友人とパルワールドについてのハナシになった。もう少しいえば、パルワールドの問題・・・ことさら「パクリ疑惑」について。
ゲームの世界において「他ゲームの要素の吸収」というのは立派な文化だ。ゲームの世界に限らず、デザイン(見た目から工業デザインまで)で模倣というのは重要な手段になる。模倣を組み合わせることで新しい形になる。
ただ、これは良い言語化だな、と思ったのは、パルワールドの模倣の組み合わせの多くが、「その組み合わせを考えた時に、一番最初に思いつくアイデア」・・・つまり「一発目を出してきとる」という点だ。
なお、はじめに書くと、俺はパルワールドについて嫌いな感情はない。ゲームの触り心地についてはかなり良いし、「パルと一緒に拠点で生活」についてはとても好きだ。その上で正体を暴くため。
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俺は、世間で言われている「ポケモンとパルが似すぎている」ということが全然わからない。今でも2つを見比べて「全然違うくない?」という感覚がある。
それは、全く別・・・という感覚ではなく、「同系統だけど、ポケモンってもっと洗練されてない?」「ポケモンだったら、こーいう角はないよね」みたいな部分をキャッチして「別だね」と判断している・・・のだと思う。
例えば「エテッパ」というパルがいる。それは「植物属性の猿系モンスター」だ。おでこに葉っぱつけて、しっぽにも葉っぱつけた、緑の毛並みの猿。これって、「葉っぱ x サル」で考えた時の、一発目のアイデアがそのまま出てきているよね、と。
ポケモンの方にも「葉っぱ x サル」のヤナップというモンスターがいるんだけれど、それは頭の葉っぱがなんかブロッコリーみたいになっていたり、胴体がちょっと猿から離れていたりする。そうやって「一発目」から離れながら、どうやって成立させるか・・・というところを工夫しているように見える。
パルにはそーいう、「一発目そのまま使うと味がないよね」という部分がない。だから、カワイくてキレイにまとまっていて、モデリングがしっかりしていても、頭に引っかからない。
その影響か、俺はポケモンには好きなポケモンがいる(コラッタ)んだけど、パルには今のところ、そういうのはない。拠点で一緒に生活しているパルはみんな好きだけれど、例えば「好きなパルは**」と言えるパルはいない。
パルの名前も基本的に「一発目」だ。「猿(エテ) x 葉 = エテッパ」「ツッパり x 猫 = ツッパニャン」「頭おかしい x 鳥 = クルットリ」と、どれも一発目・・・作品性がない。だから引っかからない。
(余談だけど、俺は友人と名前について話している時に、「俺、パルの名前ぜんぜん覚えてなくて「緑の猿」とか「氷のペンギン」とか言ってるな」と気づいた。コラッタは「コラッタ!」で、紫のネズミとは言わない。それは多分、ポケモンは「口に出したくなる」とか「名前のアイデアをギュッとして内圧を高めてる」とかあると思う。)
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他の部分も、「一発目そのまま持ってきとるな」という部分がある。
木や石、あるいは敵を棒で叩いたりする攻撃モーションはフォートナイトだし、キャラクターや世界のライティングもフォートナイト風味。マップに来た時の地名表示はゼルダだし、どこでも登れる & グライドで降りれる要素もゼルダだ。
もちろん、「良いアイデアだから引っ張ってくる」というのはゲーム制作において間違っていない。ただ、その模倣の組み合わせの「一発目」をそのまま出してきている。「ゼルダみたいな地名表示便利だよねー」と思って取り入れた結果、そっくりそのままになっている。「フォートナイトみたいに木材とか切れたらいいよねー」と取り入れた、そっくりそのままが出来上がっている。
ただ、俺はARKはやったことないんだけど、一緒に建築だの農園だの何だの、という部分は独自性があると思う。一番近いのはドラゴンクエストビルダーズ2だな、と思ったけど、プレイ体験は独自と言っていいんじゃないかな。
そのベースに独自性は確かにあると思うんだけど、その周りを構成する要素において他のゲームを取り入れる際、そのアイデアの一発目をそのまま持ってきている。結果、「いや・・・パクリじゃね?」と思われやすい作りになっている。
ちなみに、これらの要素を統合しつつ、それらがプレイ体験を損ねることなく成立しているのは、ゲームディレクター・プランナーの実力が出ていて素直にすごいと思う。だからこそ、「もう少しヒネれたらな」と思う。
上述のパルのデザインについても、「ポケモンみたいなポップな世界観で、「葉っぱ x サル」でデザインしたらこうなるよな」というのをそのままもってきていて、だからこそ「仕方ないんじゃない?」という論説も生まれやすい。一方で「そっから頑張るのがデザイナの仕事だろ」とも思う。
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あと、「実際にパクリだよね」というハナシと「パクリだと疑われるよね」というハナシは別だと思って、パルワールド制作チームは前者を回避しようとはしているけれど、後者が見えていないか、無視している気がする。
今のところパルワールドの制作チームは「法務的にはしっかり確認とってるし問題ありません!」と言っていて、そういうディフェンスの姿勢は見せていても、「パクリと疑われるよね」と言う部分には「パクリじゃねーし!!」って言うにとどまっている(2024年1月現在)。
実際、制作チームに殺害予告が届くような物騒なハナシになり、そこに対応するコストが発生しているし、任天堂さんも声明を出さざるを得なくなって、迷惑をかけている。
そーいうとこを、「いやいやそれは知らねえよ、悪いことしてねーし」って言うので無視するのは、ちょっとゲーム業界・・・ことインディーズゲーム業界に流れる、寛容で楽しい雰囲気をぶち壊しかねないなと思う。
まぁでも「いやだって、ここまで売れると思わなかったんだもん」と言われれば、まぁそうだよね・・・と同情はする。でも開発公式の日誌を見ると、「PVを作ったら反響がすごかったから、もっと腰を据えて作るべきだと思った」っとか言っているから、「ハナから大衆に向けて売るつもりだったんじゃん」と言われても仕方ない気もする。
そしてその開発日誌で、「内容から批判は来るかもと思っていたが好評だったので推し進めた」的な、つまりは「そーいう批判に対策はしなかった」というようなことを書いてしまっているので、まぁそこは落ち度だよねーーと思う。
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さらに言えば、パルワールドのゲームデザインに悪意的・・・悪ノリな部分があるのも少し、この問題を表面化させやすくしてしまっているように見える。
パルワールドには、「パルを虐待できる」「パルをブラック企業のように働かせてもいい」「人間をパルのように捕まえられる」といった部分がある。あるいはパルの名前に「エテ」とか「狂っとる」とか言う、ちょっと悪意的な部分がある。その悪ノリ要素が一部分ではなく、世界観に染み付いている。
そーいう部分が、ゲームデザイン部分についても邪推されやすい雰囲気を作っているように見える。わかりやすく言えば、「【ポケモンっぽいパルおるやん!】っていうのも悪ノリしたんじゃねえか」と。
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俺なら、世界的に爆発的に売れたその売り上げを持ってして、「ごめん!法務的には問題ないはずなんだけど配慮足りなかった!誤解生まれやすかったかも!そーいう部分ちゃんと作り直すわ!」って宣言して、そーいうパクリ疑い要素をごっそり作り替えると思う。
そこを監修する人を雇ってしっかり対策するのがいいと思う。上述した部分って、現状制作チームの文化というか、現チームの監修・ゲームデザインのトップ界隈の問題なので、さらに上に監督を置いた方がいい。
パルも、かわいそうだけれど、デザイン作り直してもらうかな。申し訳ないけれど、全リテイク・・・というよりは作り直し。それはデザイナの責任だ。法務的に問題なかろうが、「パクリ疑惑」を出させた時点でデザイナの責任は間違いなくある。(もっと責任あるのはディレクターだろうけど。)
んで、全作り直ししたけど、隠しパルにツッパニャンがいたり、村の置物に「エテッパの人形あるやん!」ってなったら面白い。(そこで悪ノリして「俺たち迫害されたんだ」とか言わせたら台無しだけどね。)
結局、「気持ち100%で遊べないように作ってしまった」というのはあるから、そこは対処しないといけないよな、と思う。個人的には好きなプレイ感覚だけど、「プレイ感情」についてはやっぱりそこまで届いていない。プレイ感情もゲームにはむっちゃ大事だからね。
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とまぁ色々書いてみたけれど、まぁなんか上手く回ることを祈っています。このプレイ体験を世の中に出して浸透させたのは間違いなく功績だし、それをまた上手いこと吸収して昇華するゲームが生まれること、そしてパルワールドサイドも騒動をちゃんと消化してくれることを祈っている。
個人的には「ドラクエビルダーズ3、この方向性で行くといいんじゃねえか!スクエニさん!」って思ってるのでお願いします。ビルダーズ2でモンスターに乗って「使役」はできたけどその先!自律的に生活するドラクエのモンスターたちと一緒に生活したい。