デザインとアートの違い
最近、なぜか「アートとデザインとの違いは何か?」という質問を何人かからされたので、ここにオイラの見解を書こうと思います。
あくまでオイラの主観です。
一言で言えば、「デザインは課題解決で、アートは自己表現」だとオイラは考えています。
デザインをしているならば、そこには解決したい課題や問題というものが存在するはず、ということです。そして、アプローチしている対象が課題ではなくて表現であれば、それはアートだということです。
たとえば企業のロゴデザインをする時。
もしそれがデザインであれば、そのロゴの全ての要素に対して、「問題解決」が含まれるはずです。
「ロゴが丸みを帯びているのは、企業イメージに柔らかい印象を与えるためです。」
「ロゴが緑色なのは、この企業が自然環境に優しい企業だとアピールするためです。」
「ロゴに地球を思わせるグラフィックを仕込んでいるのは、この会社が国際的な企業だという認識を植え付けるためです。」
こんな感じで、一つ一つの要素に、「自然環境に優しい企業だとアピールしたい」などといった解決したい課題が存在するのが、デザインです。
逆に言えば「課題がなければデザインは出てこない」のです。この企業が「自然環境に優しいとアピールしたい」という課題を抱えていなければ、このロゴは緑色にはならないのです(もちろん、他の課題の帰結として緑色になることはありますが)。
一方で、アート的要素には解決したい課題がありません。あるのは表現です。「好き嫌い」と言い換えてもいいかもしれません。ロゴアート…っていうのがあるとするならば、こんな感じですね。
「ロゴが丸みを帯びているのは、柔らかさを表現したいからです。」
「ロゴが緑色なのは、自然や木々のイメージを投影したからです。」
「ロゴに地球を思わせるグラフィックを仕込んでいるのは、世界中がつながっていることを表しています。」
一見すると何が違うかわからないかもしれません。が、ここには、製作者自身が「これを表現したいから」という以上の理由が存在しません。別にこの企業が「自然環境に優しいとアピールしたい」なんて思っていなくても、このロゴは緑色になるのです。だって表現したいから。
アートには「課題」が根っこにないので、「課題解決」が目的になりません。
表現した時点である程度の価値が生まれるのが「アート」です。たとえ先ほどのロゴを見た人が、表現者の意図どおりにロゴを受け止めていなくても、あまり問題じゃないのです。
一方で、デザインは「課題解決」が目的なので、課題が解決されていなければデザインとしての価値はありません。
「このロゴが緑色ってことは、安全でクリーンな企業なんだな」とか「このロゴ、緑色でちょっと毒々しいイメージだな」思われた場合、デザインとしては「失敗」ですが、アートとしては「どうでもいい」のです。
よく音楽とかで「この曲はこーいうことを伝えたいと思って作りましたが、実際は聴いてくれた人たちがそれぞれ何かを感じてくれれば、それだけで嬉しいです。」というようなハナシがありますが。これはアートだからですね。「伝えたい意図が伝わらなくてもいい」のが、アートの大きなポイントです。
逆に、アートは自己表現なので、「表現」がうまくいかない場合は、たとえ意図どおりに第三者に伝わるモノだったとしても失敗作です。売れない小説家が「これじゃない!」といって原稿をくしゃくしゃにするのは、「表現」がうまくいっていない場合です。
一方で、デザインは「課題解決できていればOK」ですので、「なんかこのデザイン、パッと見オイラは好きじゃないなぁ」と思っていても、それが課題解決になっているなら、全く問題ありません。「このロゴデザイン、彼らしくないなあ」とか思われても全く問題ないのです。
まあざっくり書けばこんな感じですかね。
なんか他に思いつけばあとで追記しておきます。