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LIFE SHIFT読後感、後編。

今回もLIFE SHIFTに関する話の続きだ。

以前はただ「3ステージ生活の終わり」について色々と話した。いわゆる「65歳に引退」という人生設計に賭けるのは博打が過ぎる、という話だ。

この問題の解決策は色々あるが、私がとろうと思う戦略は「80〜90歳まで働く」と「お金を生むシステムを作る」との2つだ。

(余談だが、こんな戦略を語れるなんて自分は変わったなあ、と感じた。)

この「80〜90歳まで働く」と言うと眉間にしわを寄せる人が多いので、ここで文章にしておく。皆、「80歳〜90歳まで働くのはきつい」といった顔をするのだ。果たして本当にそうだろうか。


知り合いとの会話を通じて感じたのは、「寿命が延びる」ということを苦行に感じているんじゃないか、という疑念だった。つまり、「みな等しく老い、機能が低下し、その状態のまま延命していく」というようなイメージを持っていないか、ということだった。

確かに「医療によって老齢者の病死を防ぐ」ということが寿命の延長につながるのも事実だ、LIFE SHIFT内でも語られていたが、国が発展すると、まず子どもの感染病等による死亡率が劇的に下がり、次に老齢者の病気による死亡率が下がる。これによって寿命が延びるのは事実だ。

だが、そもそも人間というのは65歳や70歳で働けなくなるほど老いてしまうような生き物なのだろうか。


実は多くの研究で、「人間は何歳になっても元気でいられる方法がある」ということが示唆されている。

例えばまだ人間が狩猟採集をして生活をしていた原始時代、人の寿命は40〜50歳くらいだった、というデータがある。ところが、これは先ほど挙げたような「子どもの死亡率が高い」という影響が大きいことがわかっている。実際、15歳以上まで生き延びることができた者たちだけで寿命を再計算すると、おおよそ70〜80歳まで延びるのだ。

別の研究で、現存する狩猟採集民と生活を共にして調査したデータによると、狩猟採集民における60歳の運動レベルは、現代文化人のおおよそ18歳と同じレベルだということがわかっている。よく「20歳が折り返し地点」という言葉を耳にするが、科学はそれを否定する。

言ってしまえば、そもそも人間という素体は70〜80歳まで元気に生きるポテンシャルを持っているのだ。「何もしなくても」だ。

一方、「何歳になっても元気な老人」……いわゆる「スーパーエイジャー」に関する研究も行われている。それによると、「脳に負荷を与え、勉強や挑戦を続けること」がスーパーエイジャーに達する道だと言われている。まだ研究途中の分野だが、世界中の先進国が少子高齢化を迎えている現代、「元気な老人」でいる方法の研究はさらに進むだろう。

長々と述べたが、言いたいことはこうだ。「寿命が延びるということは、健康な期間(健康寿命)が延びるということ」なのだ。もちろん、個々の選択によるだろうが。

だから私は、80〜90歳……もっと正確に言えば、「死ぬ5年〜10年くらい前まで」働くことを目指している。


私は2018年5月に原因不明の入院した。一週間ほど、激しい頭痛、発熱、吐き気、痙攣などで苦しんだ入院生活はとても楽しいとは言えないものだったが、私の人生を大きく前進させてくれた、とてもエポックメイキングな出来事だった(後遺症的なのが何も残らなかった医者の英断に感謝だ)。

その入院以来、私は超大真面目に健康について勉強し、実践し、おおよそ3ヶ月で屈強な心身を手に入れた。そして調べてわかったのは、「健康になる方法」というのは科学の世界でしっかり研究されており、信頼できるレベルのデータが揃っているということだ。それらを実践すれば、誰でも活力溢れる人間になれるのだ。胡散臭い商材に惑わされることなく、だ。

ところが、健康に投資する、ということは人間にとってあまり魅力的ではない。人間の心理バイアスの1つに「双曲割引」というモノがある。人は遠い未来の大きい利益よりも、近い未来の小さな利益を取ろうとするのだ。つまり、「健康のための日々の努力」よりも、「今すぐ快楽に浸れる怠惰な生活」のほうをとってしまう。人間とはそういう生き物なのだ。

ここ数ヶ月、色んな人に自分が得た科学的な健康情報を提供してきたが、それらを通して感じるのは、「人々は、ただ健康になりたいのではない。楽して健康になりたいのだ」ということだ。なんと向学心のない呆れた考え方だろう、と思うのだが、それが人間という生き物なので仕方ない。私にもそういう一面はあるのだろう。


ともかく、LIFE SHIFTという本は科学的な研究と統計データによってしっかり叩いてくれる。「なんとかなるでしょ」と思っている人にムチを打ってくれる。多くの人に勧めたい本だ。

逆に、この本を読んでなお何も変えられないなら、もう本を読むという行為を諦めたほうがいいと思う。本では君の人生は変えられないからだ。映画とかなんだとか、他の行為に頼ったほうが良い。

そのくらいにいい本だと思う。