変革を成し遂げる覚悟と、私の野望のハナシ。〜映画「リンカーン」を観て〜

まいど、いおりんでござい。

ずーっと気になっていた映画「リンカーン」を観ました。タイトルの通り、誰もが知っている超有名な大統領「エイブラハム・リンカーン」を題材とした映画ですな。

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私、予告編を観てからずーっとこの映画のことが気になっていたんだけど、その時は「この映画は南北戦争と奴隷解放宣言あたりをやるんだな」ということを思い描いていたんだよね。

だって、リンカーンと言えばソコじゃん。奴隷制度が原因で南北戦争が起きているところに奴隷反対派のリンカーンが当選し、奴隷解放宣言をした!という辺りが、日本人の共通認識じゃん。

ところがぎっちょん。

この映画「リンカーン」は、もう奴隷解放宣言をした後。もう「人民の人民による人民のための政治」って言った後なんだよね。

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歴史的な話をすると、実はこの「奴隷解放宣言」ってそこまで大きな効力はなかったんだよね。実際は、「北部軍によって制圧された南部地域にいた奴隷」のみが解放されるという、いわゆる戦時中の特別措置みたいな扱いだったんだ。南北戦争が終われば奴隷制が復活する可能性はとっても大きかった。

そこでリンカーンは奴隷制度を公的に廃止するため、アメリカ合衆国の憲法を修正するために「アメリカ合衆国憲法修正第13条」を議会で可決させようとする。

映画「リンカーン」はこの部分を描く。「いざ、奴隷解放を唱えてはみたが、実際にどのように実現したのか、そのための壁をどーやって乗り越えたのか」というハナシ。1865年1月の1ヶ月間だけのハナシなんだ。

だから、ある程度の前知識がある前提で話が始まる。一応、日本版では冒頭にスピルバーグ監督さんから簡単な背景説明はあるんだけれどね。

まぁでも、例えば日本映画「清洲会議」でも、観る人全員が「織田信長とか豊臣秀吉が何をしてどーいう最後か知っている」って前提でしょ。多分それと同じだ。

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ちょっと前に見た映画「イミテーション・ゲーム」や「アメリカン・スナイパー」もそうだったけど、この映画は英雄視されているリンカーンをとても人間らしく描いている。大きなことを成し遂げた人物が実際にどのように苦しみ、葛藤していたのか、を描いている。

「リンカーンが人並み外れたカリスマや知性、行動力によって奴隷を解放する英雄になる話」じゃない。「リンカーンが議員からの反対や家族からの批判を受けて葛藤しながらも、確固たる信念によって泥臭く立ち回り、奴隷解放を成し遂げる話」だ。

ただ英雄が活躍してスカッとする話じゃないし、極めてリアルな政治劇のハナシだから、人によっては退屈に思うかも知れない。それでも私にとっては、とっても重要な示唆に富んだ映画だった。

リンカーン役のダニエル・デイ=ルイス氏。もう、リンカーンそのものでした。 引用元: http://www.cinemacafe.net/article/img/2013/04/26/16765/66301.html

リンカーン役のダニエル・デイ=ルイス氏。もう、リンカーンそのものでした。
引用元: http://www.cinemacafe.net/article/img/2013/04/26/16765/66301.html

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この映画「リンカーン」を見たとき、私はたまたま「腐った労働環境が蔓延している業界を変えられないか」と強く思い直していたんだけど、劇中のリンカーンの姿を見てすごく感銘した。

リンカーンは奴隷制度を「病」に例えた。奴隷制度によって多くの人が苦しんでいる。そして、その治療薬こそが「憲法修正案」だと。この修正案を通すか通さないかで、今いる何百人の奴隷だけでなく、この先生まれてくる数えきれない命の運命が決まる。奴隷制度のせいで、今この瞬間にも人が大勢死んでいる。

それなのに、「戦争が集結するなら奴隷制度を廃止にする必要がない」とか「票を集めるなんて不可能だ」とか言って味方陣営ですらリンカーンに異議を唱えて一つにまとまらない。そんなハナシをしている間にも人は死んでいるのに。

そもそも、当時のアメリカは「白人は黒人より優れている」っていうことが常識なんだよね。劇中でも、「神が黒人より白人のほうが優れるように創ったのに、それを平等に扱うなんて神への冒涜だ!」なんていう、今の私たちから観ればビックリ論理が当たり前のように飛び出す。

それに、「奴隷制度によって経済は支えられているのに、それを廃止にしたら経済的にダメージが大き過ぎる」っていう問題も出てくる。これはとってもリアルなハナシで、「そんな危険な橋を渡らずとも、とりあえず戦争を終わらせよう」という同志の意見も、至極まともだ。

それでも、リンカーンは自分の信念に従って、何としてでも奴隷制度を終わらせようと邁進する。ややもすると独裁者にすら見えるような振る舞いだ。それはきっとリンカーンが「奴隷制度を終わらせる」と覚悟を決めて動いていたからじゃないかな。

彼が正義だと信じたことをやり抜いた。独裁的にも見えるよね。

彼が正義だと信じたことをやり抜いた。独裁的にも見えるよね。

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これを観ながら、私はどこかしらシンパシーを覚えた。「奴隷制度」と「奴隷のような労働環境で働くエンジニアたち」。「奴隷制度を廃止したいリンカーン」と、「大切な人に楽しい労働をさせたい私」。何か似てない?と感じた。私はリンカーンのように変えたいと思わないから、スケールは違い過ぎるんだけどさ。

実際に合衆国憲法修正13条について見てみると、ここで禁止されていることは「自由のない労働」なんだよね。原文では「自発的ではない隷属」という言葉が使われているけれど、強制労働の禁止を宣言しているわけです。

強制労働って何?っていう議論は未だに行われているみたいだけれど、「肉体的拘束もしくは精神的な拘束の恐れがあるとき」という解釈も行われている。

これって、私が前職で体験した労働であり、同じく苦しんでいる多くの人たちの労働のことじゃん。

会社の規定で言えば、苦しんでいる彼等を拘束するような条項はないし、「いつでも有給取っていい」「残業はイレギュラーなものだ」「辞めたいときはいつでも辞められる」というよーな環境は用意されている。しかし、実際は労働者を追いつめて、それらの行動をさせないような精神状態にしている職場は多い。

私自身がそーだったし、「有給が取りたくてもとれない」「残業は当たり前。しかも申請できないから公的には残業していないことになっている」「辞めたいけれど辞められない」という状態に陥っている例を私はいくつも知っている。

そして、私は、それらを解放したい。仕事は辛く耐え抜くだけではなく、楽しく動き出すモノだということを教えてあげたい。正直、彼等自身がどっちが好きかではなく、私が「楽しく自由な仕事のほうが幸せだ」と信じているから、その信念を貫き通したい。

リンカーンは奴隷制度を廃止するために、時に独裁者に見えるような振る舞いもした。闘い抜いた。私も、私の大事な人たちを腐った労働環境から助けるためには闘い抜かなければいけないのかもしれない。覚悟が必要なのかもしれない。

そんなことを感じた。

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重ねて言うけれど、この映画は人を選ぶ。エンターテイメントというにはとても地味だし、難解なテーマだし、人によっては眠くなってくるような映画だろう。私も正直、序盤のほうは「あれ、外れか?」と思ってたよ。

けれども、少なくとも私はこの映画に選ばれた側の人間だった。見終わった今でもこの映画について考えるし、割と私の人生に直結するような映画だった気もする。

ばいびー☆

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