「司令官の意図」のハナシ。
まいど、いおりんでござい〜。
私は今、「アイデアのちから」という本を読んでいます。この本は学生時代に一度読んだのだけれど、もう一度じっくり読んでる。
読書は一度目に読んだときよりも、読み返した時のほうが記憶に焼きつくことがある。映画だって、一回目じゃなくて二回目のほうが、鮮明に役者のセリフや振る舞いが記憶に焼き付くんじゃないかな。
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さて。
この「アイデアのちから」という本は学生時代に読んだときにも感銘を受けた。
当時、私は大学で色んなプロダクトの企画・開発の演習をしていた。時にはチームを組んで、自分たちでコンセプトや機能を考えて議論し、それを実際にシステムとして軽く動く形まで持っていき、最後には教員たちに向けてプレゼンテーションを行う。そんな演習だった。
講義(=座学)でモノづくりについて学んでいたけれど、実践するとなかなか思うようにはいかなかった。チームで議論をする度にコンセプトはブレにブレる。意見の統一も難航したし、実際に作ったモノに納得いかないことはいっぱいあった。
その時にこの本と出会って、感銘を受けた。モノづくりを曲がりなりとも実践していたからこそ、膝を打つような概念がたくさんあった。
その一つが、「司令官の意図(CI = Commander’s Intent)」というモノだ。
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「司令官の意図」とは、組織において上位メンバーだけでなく、下位メンバーも意思決定ができるようになるための、単純明快なコンセプトのことだ。
元々は軍で、司令官が下部の一兵卒に至るまで作戦遂行のために最適な意思決定ができるように定められるモノだ。
軍隊では作戦を立てるとき、綿密な計画が立てられる。それは、「何時何分に誰がどこで何を行うか」という行動計画から、「どういう時にどの兵器をどう扱うか」というところまで、とにかく緻密で具体的だ。
ところがぎっちょん。実際にその計画が役に立つことはほとんどないという。というのも、急な天候変化や敵兵の予測できない行動などによって、計画通りに事が進まないことが当たり前だからだ。
そんな時のために「司令官の意図」がある。これは、それぞれの分隊に対して、単純明快なメッセージとして送られる。「捕虜の救出を行え」「歩兵部隊の逃走を援護しろ」とか、ね。
こういった「司令官の意図」が分隊に与えられることで、計画が破綻としても、作戦は破綻しない。捕虜の監禁場所が変わっていれば、監禁場所を割り出すために行動すればいい。歩兵部隊の逃走経路が嵐で使えなくなったとしたら、別の逃走経路を用意・援護すればいい。
「司令官の意図」が明確に与えられていれば、分隊はそれぞれ自分たちで(最後の一人になったとしても)意思決定ができる。いちいち司令官に「どうしましょ!?」と連絡しなくてもいい。
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この「司令官の意図」は、普段の仕事とかでも十分に応用できる、と。似たような単語に「コンセプト」があるけれど、「司令官の意図」はより具体的に意思決定の指針になる。
例として、「アイデアのちから」の書籍内で紹介されたモノの一部を下記に紹介。
- 最格安航空会社(サウスウエスト航空)
- 経済なんだよ、馬鹿。(大統領選で度々用いられるスローガン)
- 人名、人名、とにかく人名。(普及率112%を誇る地方新聞社)
これらの「司令官の意図」が組織に浸透することによって、メンバー全員が各々で重要な意思決定をすることができる。
例えばあなたが、サウスウエスト航空で働いていて、「サウスウエスト航空は最格安航空会社だ」という司令官の意図が伝えられていたとしよう。
ある日、顧客調査メンバーから、「乗客に対してコーヒーや紅茶を出せば、乗客により喜んで頂け、再度利用してくれる可能性があがることがわかりました!」と報告が届いたとする。さて、このアイデアをあなたはどうするだろう?
「乗客に対してコーヒーや紅茶を出すことで、我々は最格安航空会社に近づけるのか」と問えばいいだけ。答えは簡単だよね。
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こーいう「司令官の意図」はうまく使うことで、組織のメンバーに対して意思決定能力を授けることができる。
「司令官の意図」が秀逸なところは、「1つの単純明快な意図」しかない点だ。これを定めることで、世の中に大量にある「やった方がいいこと」の中から、「私たちがやること」を選びやすくなる。組織の行動のブレを少なくできるんだ。
もちろん、「司令官の意図」を決めるのは簡単じゃない。その名の通り意図を反映しないといけないし、単純でかつ、明確である必要がある。解釈が何通りもあるようなものでは優れた「司令官の意図」とは言えない。さらに、インパクトがあって、「」
例えば、サウスウエスト航空における「司令官の意図」が「利益率の向上」とかだったらどうだろう。コーヒーや紅茶を出すことは固定客に結びつくから、利益率は向上するかもしれないし、しないかもしれない。意思決定が難しくなるし、それでは、「格安の航空会社」という経営者の意図は伝わらない。さらに「利益率」という単語では、すぐに忘れられてしまう。
「最格安航空会社」という単純明快で、かつインパクトもある言葉だからこそ、「司令官の意図」として成り立ち、サウスウエスト航空の社員に浸透するわけだ。彼等はブレずに、「最格安航空会社」だけを追い続けることができる。
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と、「アイデアのちから」からひとつ、「司令官の意図」について語ってみた。これはまだ、6章以上あるうちの1章の、さらに一部で語られる内容。もっとあとにはもっと面白い「アイデア」に関するハナシが詰まっている。いい本です。
みんなも良ければ読んでみてちょ。
ばいびー☆