具体と抽象を行き来する

専門家とは、ある分野において具体的な物事を抽象的に捉えることができる人のことだ。

エンジニアは故障箇所をみて、設計の不備にたどり着くことができる。経済家は、韓国アイドルが流行っているのを見て、その隆盛の動向を予測して投資するか決める。

だが、そこで大事なのは、「具体」にちゃんと立ち返ることだ。

故障箇所をみて、設計書の不備を修正して満足するのではなく、実際に故障した部分を直してあげることであり、韓国アイドルの流行をみてSNSや会議室で陶酔するのではなく、ちゃんと投資 or 撤退の決断を下すことだ。

ところが三流専門家は、具体に立ち帰らず、抽象の世界で満足する。本を読んで満足し、誰かの報告を聞いて満足し、統計を見て満足する。なぜなら、抽象世界に浸ることが専門家の仕事だと錯覚するからだ。

抽象世界に浸れるのは専門家の特異点ではあるが、本分ではない。抽象と具体を行き来できることが、本分だ。