ひとり

朝目が覚めてまた1日が
お茶を濁すことからはじまっている
上体を起こす気力さえ湧かずに
天井を歩く蜘蛛を眺めていた

空はすっかり晴れていて
昨日の夜の雨が嘘のよう
それでも暗い雲の後ろで
きっと雨音が鳴り響いている

こうやって僕はまた行き場をなくして
暗い路地裏を見つけては歩いて
電柱の影に身をひそめる影法師が
僕を本当のひとりにする

「君が心を開けば、相手も開くさ」
そんなうまく行くなら誰も死ぬことはないよ
誰の心だってグチャグチャで汚いもんだからさ
手を強く握れば痛くてはなされるんだろう

こうやって僕はまた空を見上げて
沈む夕日に「さよなら」ってつぶやく
今日もみんなとすれ違うばかりで
無視できないことで世界は込み入っている