イオリンの何か

駅前でギターを弾いていた

駅前でギターを弾いていた
足を止める人は誰もいない毎日
今日は雪が降るらしいって
目の前を横切った女子高生が言っていた

夢を追いかけろって故郷(ふるさと)に言われた
あれからもう5年
未だ芽は出ず誰の心にも刺さらず
生きるために始めたバイト先だけが
僕が都会にいてもいい理由になっていた

駅前でギターを弾いていた
昔からの友人はみんな結婚しちまった
たまにしか会えなくなったけれど
会うのも辛くなってきたから丁度いいもんだ

知り合いから仕事を紹介されたりもしたけど
その度に夢を選んだ
僕の5年を否定された気がして
僕の全てが否定された気がして
ちくしょう ちくしょうって必死に歌を歌ったんだ

いい年なんだからって言われた
子どもみたいって笑われた
大人になれよってからかわれた
自分でもなりたかったんだ
でも
でも

諦めてうなだれても足元を見下ろせば
昔見た夢が今もそこに輝いているんだよ
あの頃の僕がそこに輝いているんだよ

駅前でギターを弾いていた
それだけが楽しくて仕方なかった
いつの間にか降り始めた雪は
僕のステージを彩る綺麗なスターライト

駅前でギターを弾いていた
あの子との愛しい日々を唄った
あいつらとのバカみたいな日々を唄った
そうさこれこそが僕の生きた証だ

そうだろ そうだろ

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