「理想の自分」は本当の自分なのか。〜映画「嗤う分身」を見て〜〜

まいど、イオリンでござい。

先日、「嗤う分身」という映画を見たので、それに関連したハナシをこれから展開しようと思う。ネタバレとかを多分に含むと思うのでそこのところよろしくお願いします。

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今の君は「理想の自分」だろうか。

誰にだって「理想の自分」はあるはずだ。本当はもっと上手く喋れるのに。本当はもっと早く仕事を終わらせられるのに。本当はもっと要領が良いはずなのに。本当はもっとモテるはずなのに。そう思っているからこそ人はコンプレックスに悩むし、理想に向かって努力をする。

ただし、もし今、目の前に「本当は○○なのに」が全て実現した存在が現れたら、それは君の本当の姿と言えるのだろうか。

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「嗤う分身」は私が好きな俳優、ジェシー・アイゼンバーグさんが主演を務める映画だ。一言で言えば「奇作」だが、とても示唆に富んでいる。友人やカップルで見るよりも、1人で珈琲でも飲みながら嗜みたい映画だ。

ジェシー演じる主人公「サイモン」は存在感が薄く、うだつの上がらない青年だ。上司からは小言を言われ、7年間通っていたのにICカードがないと守衛さんにも止められてしまう。好きな女性を遠くから見つめることしかできない。そんな青年だ。

そんな青年がトラブル続きで上手くいかない日々に苛立ちを抱え、ある日上司に「これは僕じゃない」と叫んでしまう。すると次の日、会社にはサイモンと全く同じ顔をした「ジェームズ」が入社してくる。全く同じ顔なのだけれど、行動や性格などは正反対。ジェームズは堂々としていて喋りも雄弁だ。女性だって手玉にとってしまう。

そんな彼をサイモンは奇妙に思いながらも羨望のまなざしを向けるが、やがてジェームズはサイモンの仕事の手柄、身分、そして好きな女性さえも奪っていく。

ジェームズはサイモンにとっての「自分の理想=あるべき姿」が具現化した、ドッペルゲンガーだ。その「あるべき姿」が、自分自身のアイデンティティを奪っていく。その演出はとても奇妙だが、とても興味深い。

引用元: 「嗤う分身」予告編

引用元: 「嗤う分身」予告編

引用元: 「嗤う分身」予告編

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さて。改めて聞こう。

今の君は「理想の自分」だろうか。

おそらく多くの人は「ノー」と答えるはずだ。自分自身には至らぬ点があり、それと向き合ったり目を逸らしたり、あるいは改善するために毎日を生きていると思う。

ただ、私の場合はこう答える。「今時点で考えれば、イエス」と。なぜなら、そーいう「理想的じゃない部分」こそが自分自身のアイデンティティだと思うからだ。うまく喋れなかったり、仕事がうまくいかなかったり、要領が悪い、そんな自分もかけがえのない自分自身の一かけらだからだ。だからそれを否定はしない。

私は人の欠点が好きだ。それこそが個性と呼べるモノだからだ。リズム感がなかったり、勉強ができなかったり、飲み会に参加したいと思えなかったり、箸の持ち方が変だったり。そーいう、世間一般的に見て「欠点」と呼ばれているモノにこそ、その人の性質や人生の背景が見えてくる気がする。欠点こそがその人のアイデンティティだ。

もちろん、ゆくゆくは欠点を改善していく、という考え方でも全く問題はない。向上心がないやつは馬鹿だ、と夏目漱石は小説内で言っていたが、私もその通りだと思う。自分自身の欠点を見つめ、それを改善するために1つ1つ積み上げていくその行程も素敵なものだ。

でも、それと自分の欠点に見て見ぬふりをするのは違う。自分の至らなさ、駄目なところをしっかりと認め、それも愛してこそ、自分自身を正しく認識できるんじゃないか、と私は考えている。

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サイモンも最初は自分を憎み、自分の理想であるジェームズを羨んだ。ところがぎっちょん、ジェームズがサイモンの立場を乗っ取ろうとしはじめると、サイモンは理想の自分を否定し、「自分こそがサイモンだ」と訴えるようになる。

この物語構成は皮肉なようでいて、核心を突いているようにも思う。

「嗤う分身」はとても奇っ怪で少し難解な映画だ。けれども、そーいう「何を以て自分自身だと言えるのか」ということを考えさせられる、良い映画だと思う。

ばいびー☆

自然は雄大だ。

 - 所感・主張, 映画

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著者: イオリン

平成元年生まれ。奈良に生まれて青年時代を関西で過ごす。ITとデザインを勉強して上京しITベンチャーに就職するが、「もっと楽しいことをしたい」と退職。社会人生活をゼロからのリトライ中。見た目はダンディ、心は永遠の15歳。

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