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Stay Gold, Ponyboy.

言語こそが思想だ、というハナシ。〜MGSV TPPを通して〜

まいど、いおりんでござい。

先日、PlayStationg4のゲーム「METAL GEAR SOLID V THE PHANTOM PAIN(以後、MGSVTPP)」をクリアした。一通りメインステージをクリアして、やりたいことは大体終わった。

(今回はゲームにあまり依存しない文だけれど、一応ネタバレもあると思うので、ゲームのネタバレが気になる人は読まないでちょ。)

引用元: http://www.konami.jp/mgs5/tpp/jp/images/index.php5
引用元: スクリーンショット | METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN – 公式WEBサイト

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さて。私はこのMGSシリーズがとても好きでね。戦争だとか遺伝子だとかをテーマにしているだけあって、毎回、やる度に考えさせられる。今まで何度かエントリにしているね。

今回、興味深いテーマのひとつが「言語」についてのハナシだった。

MGSVTPPでは、色んな人たちが「世界の平和」のために考えて動いている。その結果、思想や利害が衝突して「戦争」が起きている、というハナシだ。ドラえもんの有名な言葉に「どっちも自分が正しいと思ってるよ。戦争なんてそんなもんだよ。」というのがあるけれど、まさにそんな感じ。そして、私にだって彼等のうち、どの派閥が正しいかは分からない。

で、今回その「世界の平和」の観点のひとつとして、「言語の統一と解放」が取り上げられている。

(ちょっとムズカシイハナシになりそーだね。)

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人は何かモノを考えるとき、「言語」に強く依存している。

青空を見たときに、人は無意識のうちにそれを言語化して価値観に落とし込んでいる。「青い」「綺麗」「颯爽」「ステキ」等々。何かしらの言葉に変換して、脳内に落とし込む。五感ですら同じだ。火傷をしたとき、頭の中は「熱い」や「痛い」という言葉でいっぱいになるはずだ。

それは逆も然りだ。私たちは言葉を思い浮かべるとき、同時に何かしらの感覚も思い浮かべる。「夕焼け」という言葉を思い浮かべたとき、私たちは心の中で燃え尽きるような「夕焼け」を再現し、それを視ている。

人は何かモノを考えるとき、何かしらの言葉を思い浮かべる。何か言葉を使うとき、何かしらの感覚が再現されるんだ。

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この延長として「思想は言語に依存する」と言える。言語が違えば思想・価値観が違ってくるんだ。

例えば、「がんばれ」という言葉は、英訳すれば「fight」や「go」だ。でも、厳密には違う。「がんばれ」は、困難を耐え抜くという感覚があるが、「fight」や「go」は困難に立ち向かう意味合いが強い。

他にも、英語には「敬語」がない。仲良くない人とは基本的に敬語を使う日本語話者に比べて、敬語が存在しない英語話者たちのほうが、「上下関係」に対する認識は鈍感だろう(洋画では上官にジョークを言う部下も目立つよね)。

例えば、日本がアメリカの属国になり、日本語が禁止されて英語を強要されたとき。日本人の思想は限りなく英語話者らのそれに近づくだろう。アメリカ人と日本人が違う、というハナシじゃない。英語話者と日本語話者が違うんだ。

もっと極端なハナシをすれば、支配者によって日本語が禁止されたとする。新しい言語において「自由」という意味合いの言葉が存在しなかったとする。そーした時、私たちは「自由」という価値観を失ってしまう。

言語を書き換えることは、思想を書き換えることに等しい。実際に、植民地を得た戦勝国の多くは、言語をつぶすことで彼等から祖国を奪い去った。

人は、国に住むのではない。国語に住むのだ。『国語』こそが、我々の『祖国』だ。

ー エミール・シオラン(ルーマニアの思想家)

MGSVTPPでは、「特定の言語を話す人間を殺せる生物兵器(声帯虫)」が発見、培養された。人間の声帯に寄生し、特定の言語(声帯運動)に反応して活性化して、宿主を死に至らす寄生虫だ。

「思想や意識を統一し、世界を一つにすることで争いを無くす」という派閥は、MGSVTPPにおいて、「特定の言語を話す人間を殺せる生物兵器(声帯虫)」をばらまくことで、「英語以外を話したら死ぬ世界」を創り上げ、世界を英語で満たすことで世界の思想を統一しようと目論んでいた。

逆に「世界はあるがままでいい」という派閥は、「英語話者を殺す生物兵器(英語株の声帯虫)」を世界にばらまき、世界中の民族・祖国を解放しようと試みた。

この「言語」にまつわる物語はとても面白かった。私のような日本人は母国語が世界に認識されるほど有名で自立している。言語を奪われた経験もない。そもそも日本自体、滅びたことはない。そんな私では、「言語が祖国を滅ぼす」なんて、考え至らなかっただろうからね。

劇中やプロモーション映像内での下記の言葉は、本当に衝撃だったよ。

私は小さな村で生まれた。

幼い頃、外国の兵隊たちが私の村を奪った。

大人から引きはがされ、彼等の言葉を植え込まれた。

戦争が変わるごとに支配者は変わり、その度に違う言葉をしゃべらされた。

言葉が変わると私も変わった。性格、物の考え、善と悪。

言葉は人を殺す。

引用元: 【公式】METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN | E3 2015 Trailer [Long] (JP) – YouTube

こう考えると、語彙力って大事だよね。語彙力をあげることは、そのまま価値観・世界を広げることになる。私は「自由」という言葉を知っているから、自由を目指せるけれど、「自由」なんて言葉を知らなければ、私は自由なんて考えもしなかったかもしれない。

言語ってすごいな。ただのコミュニケーションツール以上の価値があるよね。

ばいびー☆

「美しい」と「beautiful」も多分違う。
「美しい」と「beautiful」も多分違う。

関連: 日本語は敬語と平語の中間に値する言葉がない、ってハナシ。 | イオリン手記

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